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ものぐさにっき。

成分の99%は萌えで出来ております。
あなたがわたしのかみさま。
身近な人のお勧めが気になるというか、例えば友達が今○○に嵌ってるの、というとそれが記憶に残ってたりする人です。
そんなわけで、ミッコがこの間辻・村深・月さんの話をしてたものだから、「いっぱい本が出てたけど、どれが一番お勧め?あ、入門編なので上下巻じゃない一冊読みきりの本で」と尋ねてみたところ、「うーん、スロウハイツかなぁ」との返答。
そんなわけで早速スロ・ウハイ・ツの神様、という本を手にとってみたわけですが、ミッコさん、これ上下巻なんですけど(笑)。

いやまあいい、久々に、ほんと超久々に読書なぞをしてみたので、以下ネタバレ感想でーす!
涼しい午前中にベランダで鳩を追っ払いながら読んでたら、うっかり日焼けしそうになったので慌てて部屋に引っ込んだよ。
どこまでも…引き篭もりの抜けない生き物…。
そもそもこの作家さんがどういう作風だとかどういったジャンルの書き手さんだとか一切知らずに手に取ったこの本。
青春群像なの、それとも何か殺人事件とか起きてミステリに変貌しちゃうの?とそういう意味でも、裏表紙のあらすじからは先が読めず、展開(事件の発生)を待ちながら読んだ上巻。
結論から言えば、誰も死なないし青春群像ともちょっと違う感じがするし、ミステリ?と呼ぶほどワタシ自身がミステリジャンルに精通しているわけでもないのでよく判らないし、結局まあ、ジャンルはどういう振り分けになるのか読み終わった後もわからないままでした。
そんなのはどうでもいい!と思わせる力が、でも、この本にはあった。
正確に言うと、上巻はそんなわけで何か大々的な出来事が起こるのを待ってたにも関わらず肩透かしを食らった感じで「あれ?それがテーマなの?」と思う程度、下巻になってちゃんと物語は動き始めるけれどでもそれもこう決定的な何かが明確になるというほどの感動もなく、ですがこの上下巻に至っては、個人的にはすべてが終章に集約していたと言っても過言ではないような気がします。
というか、上下巻を普通のテンションで読んで、けれど終章で一気に感情が動いた小説でした。

お話はとある東京の片隅にある駅から徒歩15分のアパートに暮らす人々の、それぞれのお話。
オーナーは25歳の若手脚本家。彼女がとある伝で手に入れた古い旅館を仲間と暮らすためのシェアハウスとして提供すると言い出したところからすべては始まります。
気性の強い脚本家とその学生時代からの友人である人々、それと仕事を通じて知り合った売れっ子ラノベ作家とその出版社の編集。
脚本家の友人たちはそれぞれに映画監督の卵だったり漫画家志望だったり画家志望だったりするので、とてもクリエイティブな七人での共同生活という、実に高濃度なキャラクターたちと言えないこともないですが、その実は夢に迷い恋に迷い未来に迷う発展途上の男女たちという、とても感情移入しやすい等身大の人間たちのお話でした。
誰かがおざなりになることなく、かといって過度に作者の思い入れを感じるわけでもなく、適度にそれぞれの立場で進路や恋に悩む様が、けれどちゃんとキャラの性格に合わせて描かれています。
「そこは正論としてはそうなんだけど、感情としてはこうだし、その子自身はそういう子なんだよ!」と思わずキャラ同士の諍いで言いたくなっちゃうような。けれどそう言ってる自分自身だって当然他人から見れば間違いだらけ矛盾だらけ、そして何より全然賢くない馬鹿な生き方をしているように見える面もあるんだろうな、と思わず思ってしまうのは、このお話に出てくる登場人物たちが二十代から三十代という、ラノベよりは今の自分に近い年齢の人たちだからこそ考えさせられることなのかもしれません。

各章、それぞれにスポットを当てたようにみせつつ(うん、みせつつ、というだけ)登場人物紹介代わりに上巻は進むのですが、それぞれの別々の人生がけれど「スロウ/ハイツ」というシェアハウスを通して繋がってゆき、一つの小説として出来上がっています。
語り手が漫画化志望の青年が多いので彼が主人公というか物語の主軸なのかな、と捉えてしまいそうになるのですが、実はこの物語の主人公は気の強い脚本家と半引き篭もりの作家先生で、物語もこの二人の人生がメインになっていました。初め、本当の意味では気付かなかった。それぞれの濃いキャラクターの話が絡んできてたからサ。

小説家は昔、自分が書いた小説が元になって殺人事件が起こり、そのことで一度は筆を置いたことがあり、脚本家の彼女は詐欺師の母親のせいで世間や学校から爪弾きにされた辛い学生時代を彼の小説に励まされて過ごした経験を持ち、なんとか今の自分にあのころの自分の恩返しができないだろうか、とこの一件何の脈絡もない人々を集めてルームシェアを言い出したのでした。
あんな事件が起こってもなお、彼の作品が好きだと思ってる人たち、そして何より今現在夢に躓いている彼ら自身がもう一度彼の小説に熱中してた頃の気持ちを取り戻してより高みへとステップアップできることを願って厳選された同居人たち。
彼らの将来を友人として心から応援すると同時に、こんな自分みたいな気難しい人間と友人でいてくれる彼らだからこそ、小説家の「家族」と呼べるような友人になって彼の人生を豊かにしてくれまいかと願った脚本家。
こう説明的に書いてしまうとあまりにすべてが出来すぎというか、脚本家は自分の人生まで脚本どおりに操ってしまうのか、と25歳の彼女に対して慄く気持ちが生まれてしまいそうですが、いえいえ、そんな彼女だって知らないところで、自分の予想できない事件は起きて、そして何より彼女が心から心配している小説家は、実はもうとっくに癒されていたのです。何も出来ないと無力を嘆いていた彼女自身の手で。

…という事実が現在の本人たち不在で語られるのが、「終章」という名の過去編でした。

そう、ワタシ、この終章手前までは普通の小説としてふーん、と読んでたこの作品ですが、この終章で一気に泣いた。この終章でこんなにも泣かされたのはけれどやっぱりこの終章に至るまでの前ふりともいえる上下巻分の「現在」があったからで、そう考えると、おお、すごいなぁと素直に感嘆してしまいました。

過去編。
それは昔の事件で傷ついていた当時、彼の小説を楽しみにしている一読者でいるだけで何も出来ないと思っていた若かりし日の脚本家に、実は小説家は出会っていて、なおかつ彼女に恋をしていたんだよ、というどんでん返しか、的なお話でした。
実はそれまで各キャラにスポットを当てた話で繋いでいるようにみせて、その合間に小説家の話なんかも織り交ぜていたにもかかわらず、小説家の彼視点で語られた話がなかったのはすべてこの終章を小説家視点で語らせるためだったようです。
小説の手法なんてひけらかして語るようなことじゃないけれど、でもこういった計算は大好き!
いやもう10年くらい前なんて小説家はともかく脚本家なんてまだセーラー服の学生ですよ!ということで、そんな小娘に対するストーカーに近い小説家に「おいおいおい!」と突っ込みを入れたくなるのを堪えつつ、けれど終章に至るまでの割愛されたのか?とも思えるような合間がこれですっかり綺麗に埋まるので、段々と本を掴む手も震えるってなものです。
というか、それまで半引き篭もりの社会不適合者と紙一重の、けれど絶大な才能を持っている、争いを好まない気弱で優しい小説家というイメージが、実はそんな側面すら同居人の彼ら視点で見た小説家のほんの一面でしかなかったんだよ、と気付かされたことに、この小説の面白さを感じました。

で、この終章というか小説の更に感心してしまったところは、実は脚本家と小説家は両想いだったんだよ、という過去編を終章で描いておきながら、その過去編は別に登場人物の誰に向かって語った種明かしでもなんでもない、ただの小説家の回想でしかなく、その先のエンディングで小説家は勘当された田舎に戻って小説家を続けてはいるものの、脚本家の彼女は渡米して更なる売れっ子になっちゃってまあ、という「劇的に変化しなかったその後」を描いているところです。
え、あれから何年経ったの?五年?あの終章で二人は両想いで実はこれは恋愛小説だったのか、と持ってくこともできたのに、そうはせずにその後の二人の関係性に読者の想像を余地を残したところがまた、読後感をよくさせています。そう、明確な終わり方をされるよりも、実はこのほうが読後感がいい。個人的な感想かもしれません、というか、多分この小説家の書くラノベを読んでる学生と同じ年のころの自分からしたら、明確にきちんと恋人同士になったかはっきりしてよ!という感想を抱くのでしょうが、もうその年代ではない、作中の言葉を引用するところの「チヨ/ダ・コ/ーキを卒業した現在のワタシ」は、そう思うのです。

多分二人は遠回りに遠回りを重ねた挙句にくっつくんだろうな、というのはうっすらと見える程度で、ひょっとしたらこの距離感のままシェアハウスで暮らしていた頃のような仕事仲間兼誰よりも大切な友人でいるかもしれない。別に仲違いして二度と会わないというような事件が起こったわけでもないけれど、小説家が自分から過去を告白して、彼女もまた同じように自分の過去を告白して、というドラマティックな展開にはならないかもしれない。現実がそう上手くいくわけでもないけれど、でもこんな身近に感動だってちゃんと用意されているわけだから、と、どちらもといいきれない空気。
そんなふんわりした終わり方に着地したこの小説が、だからワタシはとても満たされて読み終えることが出来たのでした。
明確なのも、場合によっては好きですけれどね。作風と内容によるよね。

タイトルの「~の神様」というのは、スロウハイツに住む住人から見た小説家、という位置づけに被せて、小説家にとって幼い日の脚本家が神様のような存在だった、というダブルネームでもあるのですが、ところでこの「(誰か/何か)の神様」って表現方法、昔流行ったような覚えがあるのはワタシだけでしょうか?(今25動とかで使われてるより、もっとずっと昔の話)
だからワタシの中では、未だに「ルヒはエースにとって神様だったんだなぁ」と思ったし、望美にとって朔が神様のように見せかけて、実は朔にとってこそ望美が神様なんだ、というキャラの位置づけ解釈の中で凄く自然と浮かんでくる言葉だったりもするのですが…。
出典がちゃんと思い出せないな(笑)。明確じゃないことは黙ろう。でも、要するに自分の心を救ってくれた相手=神様という呼び方は、不遜というよりシンプルで判りやすくて好きです。
とっかかりがよかったので、このひとの作品、他のも読んでみたいとおもいまーす!でも時間がかかるんだろうな。この上下巻を読むのに今回、二日かかったよ(笑)。どんだけ遅いんだ。
Comment
≪この記事へのコメント≫
いやいやいや!
「メジャースプーン」って言ったの。
でも一番好きなのはスロウハイツなので、結果オーライ。
メジャースプーンも凍りのくじらもオススメですが、正直一冊読めば、系統は同じなのでそこら辺の期待はしない方がいいかも。
うん、この人はラノベが合ってると思う。
2010/05/06(木) 17:09:15 | URL | Mキコ #-[ 編集]
なん…だと…?!
ぜんぜん違うじゃん(笑)!ワタシなんで違うタイトル覚えてたんだろう。すごい変換率だ。でも結果オーライだったなら、いいや。折角なのでじゃあ次はメジャースプーンでも読むかな!

お約束だろうとなんだろうとさ、何が一番いいって、「アンハッピーエンドが殆どない」ってことだよ。
いやもう、商業誌でアンハッピーとか自体、ありえないんですけどね…(目をそらしつつ)。
2010/05/06(木) 21:09:17 | URL | タカヤマ #-[ 編集]
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