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ものぐさにっき。

成分の99%は萌えで出来ております。
遊び相手は誰だったのか
辻村作品五作目は、少し戻って「子どもたち~」です。上下巻二段組なのに非常にワタシが読むのを渋ってた本です(笑)。面白い作家さんだってわかってるけどさ…でも二段組はなかなかとっつきにくいイメージなのよ…(先入観)。とっかかりだけの話なんですけどね。
で、読み始めたらちゃんと面白かったわけでして、以下ネタバレ感想。
続けてもう一冊、読みきりの本も読んだのですが、こちらは少し内容に凹んだので感想はナシで。うーん、このひとの作品で初めてだ。読後感がいまいちだったのって。ミッコが全部が楽しめるわけでもないよ、と言ってたのがまさにその通りで、いつも思うけれどミッコのワタシに対する言葉の数々は的確である。
読み始める前にミッコが「これが一番ミステリらしいというか、謎解き小説だよ」と言ってたのを思い出して、さもありなんと思ってしまった。
何せ起きる事件というのがタイムスリップでも飼育小屋のうさぎ虐待でもなく、殺人事件ですから。ミステリの王道、なんともストレートな事件性。
けれどこの小説は犯人は最初からわかってるというかむしろ主人公で(笑)、何を謎解くかというと、それは主人公の犯罪の片棒を担いでいる「」の正体なのでした。。不明人物。顔なき共犯者。
大学の研究所にいる主人公。学校でとある論文提出コンクールみたいなのがあって、自分が優秀だということを判っている主人公か、もしくは同じ研究室のこれまた優等生くんが受賞をするだろうね、と言われていたのに、蓋を開けてみれば最優秀賞は「」と名乗る謎の学生がかっさらっていったことが、そもそもの主人公との始まりです。
教授たちも勿論生徒も誰も知らない、「」。名乗り出るように言ってもうんともすんともいわない「」。やがて月日が流れ世間からは「ああそんな騒ぎもあったね」程度に忘れられてゆきますが、プライドの高い主人公だけは顔も知らない相手に負けたことを屈辱に思い、密かに「」を探し続け、そしてある日、ついに辿り着いた「」の正体は、なんと子供の頃生き別れた双子の兄だったのでした。

そもそも、母子家庭で育ち母親に虐待されて育った主人公。その母親が死んだあとに施設へと入れられますが、そこでもまた性的虐待を受け人間接触嫌悪症(って昔タクミくんシリーズで称してた)に。なんとかそこを抜け出て今では表面上は穏やかな大学生活を過ごしていますが、話を聞いた兄はそれを許しはしません。
もういいんだ、兄さんに会いたい、会えるだけでいい、とパソコン越しの相手に弟は何度も訴えかけますが、兄はなぜか会えないと繰り返すばかり。まさか、兄も自分のように施設で虐待に合い、人には見せられない体になっているのではないだろうかと危惧した弟は強行に再会を迫ります。
そんなある日、兄から一つの提案が。
「判った、会おう。ただし、会うまでの間、ゲームをしよう」
それは、双子の兄弟が世間に復讐するための殺人ゲームでした。
相手が出すヒントから指定されている人物を探し出し、交互に殺してゆくゲーム。
弟側は殺人に対してはなんの感慨も抱いていませんでしたが、なんでもいいから兄に会いたい、兄に会えるならどうなってもいい、という気持ちで一心にそれをします。
指定された回数は八回。それぞれ四人ずつ殺したところで兄は再会を約束してくれましたが、初めこそ主人公がなんとも思ってなかったその殺人ゲームが、次第に弟の心を追い詰め、苦しめてゆきます。それは、ひょんなことから昔の研究仲間を殺してしまったことがきっかけでした。
もうこんなことはやめにしたい、兄に会えなくてももういい、とまで漸く我に返った弟に対し、兄は殺人をエスカレートさせ、ついには弟の友人たちにまで手を伸ばそうとします。
どうしたら友人たちを守れるか。それは兄より先にゲームの内容を紐解き、他の誰かを殺すこと。そうすれば次のステージにゲームは移り、友人たちはひとまず安全になります。
負のスパイラルとはまさにこのこと?
最終的には弟の周りの人間まで巻き込んで八回の殺人は行われてしまい、最後兄だと信じ続けた「」を殺そうとして返り討ちにあった弟が左目を失明し心神喪失になって殺人ゲームは終了、世間は「」の正体に辿り付けずしまいなのでした、…というところで終わるわけでは、もちろんなく。

ラスト謎解き。

双子の兄は実はとっくに死亡していました。というのも、そもそも母子家庭で虐待にあっていた弟は、ある夜寝ている母親と、それを止めに入った兄を殺してしまい、とっくに天涯孤独だったからです。
実在した兄は自分が殺してしまいましたが(そして弟はその時のことを忘れてしまい、結果強盗殺人扱いになって犯行は問われなかった)、母親からの絶え間ない虐待、心の拠り所だった兄を失ったこと、それからその後の施設での慢性的な性的暴行によって弟の精神はとっくに病んでおり、そんな弟が現実から逃げ出すために作り出した架空の人格こそ、「」だったのです。要するに、二重人格というオチ。
しかもややこしいことに、これまでの弟を主人格で、今回「」として久々に表舞台に出てきた二重人格をサブ人格とするのなら、そもそも弟本人の人格はサブ人格()のほうだった、ということ。これまで友人たちと生活をしてきた主人格こそ、弟が殺してしまった兄を真似た姿だったというのだから、もうこの弟の病み具合ったら根が深いとしかいいようがありません。(そして勿論主人格たる兄真似のほうは、自分が二重人格者だなんてことは気付いていないのだから)
兄を殺してしまった記憶さえも封印して、あたかも兄が生きている、いつか再会したい、自分たちはお互いに理解者だ、とそれだけが虐待生活のなかで希望の光だと思い込むことで、今になって殺人まで犯すようになってしまった弟。けれど、そうやって会いたがった「」は自分の心の中にいたというのだから、もうどこにも救いはありません。
あえて言うなら、そうまでして自我を眠らせていた本来の弟である「」は、殺してもらいたがっていたということが救いかな。弟とゲームをやるふりをして彼自身は本当は殺人なんて犯してなくて(自分が殺したと犯行声明を出した殆どが事故死で偶然の一致だった)、本当はもう自分たち自身ではどうにもできないこの状況を早く外部の人間に気付いて止めて欲しかった(殺して欲しかった)というのだから、一概に主人格、サブ人格だけを責めて嫌いになれないというのがこの物語のポイントかもしれません。まあ途中から段々と錯乱してゆく弟に殺された人たちにはもう、本当に償っても償いきれない罪だろうけれど。

そんなわけで生き別れの双子、というキーワードが出てきたところで(わりともう最初)主人公二重人格説は誰でも考える可能性の一つだと思うのですが、これが途中揺らぎまくって「え、ほんとにそんなオチ?」と疑ってしまうのは、周りを固めるキャラクターたちも一概に綺麗な身とは言えず、怪しい人がそこここにいたからかもしれません。惑わされるよ!
そしてワタシはこれまでに何冊か辻村作品を読んで、漸くこのひとの作品のパターンを掴み、次は騙されずに謎解き以外に隠されてる何かを見つけてみせるぜー!と息巻いていたにも関わらず、今回もやっぱり見事にそのトリックに引っかかるのでした(笑)。
いや、ヒロインがね。ヒロインが初め主人公と同じ研究室の友人の彼女として登場して、その三人で「友人←彼女(ヒロイン)←主人公」という三角関係ならぬ、主人公の横恋慕図式を形成してるんですけどね、このヒロインが実は友人の彼女じゃなくて友人の妹だった、というのが今回のひっかけネタです。
つまり主人公はヒロインに対して「友人の彼女なんだから自分のものにはならない」という諦めを抱いてて、それが彼をより一層救いようのない精神状態へと追い詰めてゆくのですが、実はヒロインは友人の恋人じゃなくて妹で、そしてまた彼女も主人公のことが密かに好きだったものだから、この二人のすれ違いが事件に拍車をかけてて切ないことになってます。
あ、この子がキーマンだ!っていうのに気付いたのが下巻に入ってからだというのだから、まったくもって何も学習してないワタシです(笑)。(正確には「あっ、そういえばこの子の苗字が出てきてない!」ですけど)(で、そこからもしかしたら彼女じゃないの?!と推理が流れてゆく)

更に一番物語を混乱させているのが、元研究所の同期(友人のルームメイト)だと思うのですがそれはさておき、この二重人格の殺人者の裏側には、実はもう一人の実在の「」が存在した、というのが二重のオチです。
偽名でレポートを提出して大学を騒がせたのは、実は飛び級で進学した少女で、彼女は昔から友達のできない自分を自分を持て余していました。自分の実力を試したい気持ちはあるけれど、ただでさえ飛び級ということで周りから浮きがちなのに、これ以上悪目立ちしたくない、という気持ちとで半々。だからレポートが優秀賞をとっても、「」を名乗り出ることはしませんでした。
彼女は自分を探している主人公とネット上で知り合い、興味を持ち、彼の兄を演じますが、段々と本当に主人公に恋をしてゆきます。
結局まあ彼女は「」である弟(の本来の人格のほう)に殺されてしまうのですが(そしてそこからは二重人格の主人公による一人二役殺人ゲームが始まる)、そんなひとが初めにいたものだから、まず「」が実在の人物じゃないなんて思いがたかったのかもしれません。いやいや、主人公が実は二重人格で兄も弟も全部自分だった、というオチだけでも納得はしましたけど、そもそもの始まりであるこの少女の存在があったからこそ、この小説が更に引き締まったのかなぁ。
あ、因みにヒロインは殺人ゲームの最後の犠牲者として一度は主人公に殺されたかにみえましたが、奇跡的に一命を取りとめ、けれど病院で目を覚ましたときには大学に入ってからのすべての記憶を失ってて、もう主人公のことさえ覚えていない状態になってしまいました。
心神喪失のふりをしていた主人公(兄の真似をしていたサブ人格が死んでしまったので、今度こそ眠っていた弟の主人格本人)は護送途中で逃亡し、そんな彼女に親友のふりをして会いにきたりします。が、結局名乗り出ることもなにもせずに、ただヒロインの幸せだけを願って身を引く主人公。
まあ元から凄く優秀な人間だったので、多分捕まるようなへまはせずに逃げおおせるんだろうな…。この後の彼がまだ殺人を犯すかそれとも静かに生きてゆくかは全然判りません。ただ、彼にとっては今でも記憶を失ったヒロインがとても大切な存在であり、彼女のことがある限り、きっと最後の一歩は踏みとどまれるはず、ということが、多分作中で言いたかったことだと思われます。

なんか初め読み始めたときはというか、実はこの作家さんの作品てどれもそうなのですが、とっかかりのテーマやキャラは「ふーん」って特に興味をそそられる設定とか何もないのに、読み始めて後半になるとぽつぽつ泣かされるポイントがあります。
今回とか、クライマックスと特に関係ない、ヒロインの友人のおじいちゃんのお葬式のくだりで泣いてしまった。友情に。なんだそれ(笑)。相変わらずベランダに椅子を出してたまに飛来してくる鳩を追っ払いながら読んでたので、もしも外から見てる人がいたら、ベランダで泣いてる不審(過ぎる)な女としていやもうとっとと忘れてくださいって感じですかね…。悪戯の罰にベランダに放り出されて泣いてる子供じゃないんだから…。(と自分で思った)

そんなわけで今回も読み応えというか、面白い作品だったと心から思います。こうやって読んでて充実感のある本に出会えると、他にも読書したいなーとか思えるんですよね。
Comment
≪この記事へのコメント≫
初耳でしてよ。
もう一冊何読んだの?
何となく予想はつくような、案外あれのような…。
2010/06/08(火) 21:22:45 | URL | Mキコ #-[ 編集]
君がイベント行ってる間に
読んだよ、一冊。そして内容があんまりぴんとこなくて読み終わったよ。ただ単にそういう気分だったのかもしれないけど。
「太陽の坐る~」なんだけど、そういえばミッコの評価聞いたことなかったね。
2010/06/09(水) 08:50:33 | URL | タカヤマ #-[ 編集]
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