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ものぐさにっき。

成分の99%は萌えで出来ております。
冷たい校舎
読書の秋というわけでもないのですが、ずっと手が伸びずに積んでた辻村さんのデビュー作に漸く手をつけました。
ずっと手が伸びなかったのはこれ、上中下の三冊だったからです。笑。
でも読み始めたら早い早い、心理描写が殆どだから纏めて一日で読めてしまいました。なーんだ。
この人らしい構成で、なんというか他の作品を殆ど読んだ後でデビュー作に戻ったからか、原点回帰というか基本に忠実な習作を読んだという感じがちょっとする。

お話は、高校受験を控えた三年生たち。ある雪の日、彼ら、彼女らが登校してきたら、不思議と学校はもぬけの殻。大雪で休校になったのかしら、伝達がこなかったのかしら、と訝しがる学生らには、実は一つの共通点がありました。
それは秋の学園祭でクラスの実行委員を務めた面子であったこと。そしてその学園祭最終日、同じクラスの誰かが校舎の屋上から飛び降り自殺をして、皆が皆、それが誰かを忘れてしまっていること。
雪の日の誰もいない校舎に閉じ込められた学生たち。自分たちを閉じ込めているものの正体は?そしてあの自殺の裏に隠された事実とは?

そんなお話です。
では、以下ネタバレ感想~!
この人のPNと同じ名前のキャラが冒頭から出てきてます。そういえばPNが思いつかなくて、小説から取ったってどっかで読んだ気がする。
自分のPNを取るくらいだから思い入れのあるキャラなのか、それともただたんに一番最初に名前が出てくる登場人物だからなのかと暫し悩む。だって前者だったら即ち、物語の最後まで関わってくる重要人物かなって思わずにはいられないじゃないですか(笑)。
結果はその通りだったんですけどね。
この人のトリックの手腕はもう何度も見てきたから、今回も名前トリックだと判っていて、尚且つ担任の「榊先生」のフルネームが出てきてないことも同じくチェックしてたはずなのに、結局今回も騙された!笑!
いや、騙してくれるからこそ、読み甲斐があるってもんですけど…。

学校に閉じ込められた!というあらすじで組織的な犯罪を思い浮かべる方もいるやもしれませんが、こっちはもうちょっとファンタジーというかSFというか、精神世界的な話でした。
”神隠し”という題材にヒントを得た感じで、「ここは自殺した誰かの心が作り出した架空の世界」という認識が当たり前のように浸透してゆきますが、実際は(ネタバレ感想なので言っちゃいますが)「クラスメイトを知らず自殺に追い込んでいた自分を許せない誰か」の作り出した精神世界でした。
そんなことがどうして出来るのかについては、一応精神分析やこれまで世界中で発生してきた神隠しを例にとって検証していますが、結局その「誰か」が作者と同じPNを持つ少女で、当初閉じ込められた八人の中に自殺した「誰か」が混じっているという憶測の元に進んでいた話はしかし、自殺したクラスメイト自体は無関係だった、というオチでちょっと肩透かし。(正確には無関係になりきれないというか、最後に死んだクラスメイトの幽霊も関わってくるのですが)

作者と同じ名前を持つ少女がクラスメイトのとある女の子と仲違いしていて、受験ノイローゼも抱えていたクラスメイトは文化祭最終日に少女とまたすれ違い、それがきっかけであてつけるように学生たちの目の前で飛び降り自殺した。
少女とクラスメイトの接点を知ってるのは当人たちだけ。仲違いしていたがそれが自殺の原因であることを知っているのも当人たちだけ。少女はそのきっかけとなった「仲直りを求める手紙」を破いてトイレに捨てることで証拠隠滅させました。これでクラスメイトの死因は完全に「受験ノイローゼ」のみとなってしまったのです。
けれど日々後悔の念が募ります。自分が彼女を追い詰めて殺した。今までイジメにあってるのは自分の方で彼女こそ悪人だったのに、それが彼女が「被害者」となることで逆転してしまった。暴かれる日が怖い。けれど暴かれないまま忘れられてゆくのも自分自身が許せない。
そんな葛藤から、生み出した「理想の自分」。友達に守られるほど弱い、自殺したクラスメイトのことをひたすら後悔する自分。それが「理想の自分」。それが叶えられる世界で、彼女のことをけして傷つけず受け入れてくれる友達だけに囲まれて懺悔してゆきたい…。

いやまあ、よくこんな面倒な子と友達やってるな周りの子は!笑!
とまず第一に思ってしまうくらい、周りの文化祭実行委員メンバーはそれぞれに個性的で学生らしい青臭さを抱えてはいても優秀ないい子たちです。もともと進学校って設定だから頭の回転が早い子ばっかりっていう設定を作れたのかな。
まあそんな作中にずっと出てきた「理想の自分」も結局は弱いところばかりを前面に押し出した守って欲しい自分、という設定で、現実世界の彼女はもっと強くしたたかな一面も悪意も持つ普通の人間である、という説明が入るのですが。(だからこそ自殺の原因を疑われる前に証拠隠滅させちゃったし)
けれどそういったキャラというか固定観念が上手に読み手に植えつけられてゆくのだから、これも作者の手腕の一つというか、物語を読むということの基本的な面白さなのかもしれません。

そうそう、ワタシが騙された名前トリックは今回、本当は誰かが自殺して7人しかいないはずの文化祭実行委員メンバーなのに、今学校に閉じ込められた面子は八人いる。これはおかしい。つまりはこの中の一人が自殺した「誰か」で、自分たちはその消された記憶を取り戻し、あの日何が起こったのかを突き止めなくてはならない、というものだったのですが、この「実行委員は八人いたけど、誰かが欠けて七人」というのがトリックだったんですね…。
確かに八人でしたが、それは「榊先生」を含めて八人。つまりは元からこの面子は自殺とは関係なく揃っており、八人目の学生、それは若返った「先生」だったということです。
精神世界なんでもアリね!
この若返った先生の背景だけは結構浮いてる感じなので、怪しいなとは思いつつも話がスピーディに進むのでついつい見逃しがちの真相。八人目の生徒=学生時代の先生、だなんてトリックに見事に騙されてしまいました。
(だからフルネームが出てこなかったり名前があだ名だったりしたんだな、と後から、ほんと後から色んな謎が解けて、読み終わったあとはすっきりする)

クラスメイトが自殺した事実も少女がそれを後悔して自殺を図ったことも、そんな不安定な状況で死に掛けている少女が作り出した世界に友人と先生が巻き込まれたことも全部事実ですが、その後結局少女は自分の罪を相手の両親なり友人たちなりに打ち明けたかといえば、そうじゃない様子で日々は続いていった模様。
じゃあ結局何が彼女の罪悪感を晴らしてくれたのかといえば、それはこんな自分を見捨てず最後まで精神世界に付き合ってくれた先生と、それから最後の最後で彼女の不安定な心を鎮めてくれた、自殺したクラスメイトの魂であり、それは三人にしかわからない、語られない世界の話、という解釈でいいんだろうか。まあそんな感じです。(一番大事なところをあやふやに纏める人)(まあ感想の捉え方は人それぞれ!)

三部作という長編を破綻なく飽きさせずに読ませる力量は確かなものですが、これを見て習作と思ってしまうのは、やっぱりこの後の成長した作者の作品を先に読んでいるからですね。
殆どこれで読みきったことになるけれど、やっぱりスロウハイツ~とか名前探し~が強く印象に残っているかなぁ。序盤に読んだからというのも理由かもしれませんが。
あっ、スピンオフの短編も読んでみるつもりでーす。
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