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ものぐさにっき。

成分の99%は萌えで出来ております。
海の底
有川週間(週間てほどマメでも多分ない)第二段~。
この人の作品を全部読むつもりなのですが、とりあえずお次は「海の底」を読みました。(お勧めしてもらったので♪)
この人ほんと、自衛隊とか機動隊とか組織に特化した書き手さんなんだなぁとしみじみ思いました。
このお話は、横須賀基地を突然巨大甲殻類の大群が襲撃、ものすごいスピードで人間を次々襲っては食い散らかしてゆく、そんな外敵と人間の戦った一週間のお話です。
まず海から突如現れた何万という巨大ザリガニの群れ(しかも人間よりもっと巨大)(鋏の一閃で人間の足なんて簡単に切断されちゃうくらい)という奇抜な設定に、ちゃんと学術的な説明をつけたのがすごいなあと思います。正確に言うと学術的根拠は捏造なのですが、ワタシは小説は面白ければ勝ちだと思っているので気になりません。どこまで真顔で絵空事を論じれるかが手腕ですよね。
で、その巨大ザリガニに対する人間たちの動きも、

①巨大ザリガニに襲撃され逃げ遅れた民間人の子供13人と、それを保護し湾内に停泊中だった潜水艦に立てこもった自衛官2名(静)
②巨大生物の襲来を受けて出動した警視庁+機動隊(動)

前線に出てガンガンザリガニと戦う立場の機動隊と、潜水艦に立てこもって子供たちのケアをしながら収束を待つしかない自衛官。
陸上の機動隊(警視庁)は政府(警察庁)や米軍や自衛隊なんかとの微妙な線引きの中で目の前のザリガニと肉弾で戦っていかなくてはいけないし(機動隊の装備程度だと、ザリガニの甲殻が弾丸を弾き飛ばしてしまう)、司令部は司令部で上層部との政治的駆け引きなんかもしつつ市民を守らないといけないし。
反対に潜水艦の中という非日常空間(限られたスペース)に押し込められた子供たちは、いつ終わるとも助けが来るともわからない状況で精神的に己と戦わなくてはいけない。
この対比する二つの存在がメリハリあってまた面白いです。

以下感想は結末までのネタバレを含むため隠しで。
主人公は多分、子供たちと一緒に潜水艦に篭城することになった自衛官二人のうちの一人かな?
飄々とした外面のいい自衛官と、かっとなりやすい感情派の自衛官。この同期の二人の掛け合い漫才みたいなやりとりがまた面白いです。
自衛隊だけではありませんが、組織に突出すると含蓄などが過多になりさらっと読みたいワタシのような読者には敬遠されがちになりますが、この人の小説は人間たちの会話の中に判りやすくそういった説明が盛り込まれていて、全然読みやすい部類だと思います。
自衛官二人は巨大ザリガニの襲来を受けて本船から緊急避難する途中で逃げ惑う子供たちを発見。職業柄義務として救助に向かうも、退路を断たれやもなく潜水艦に逆戻り。
その際、子供たちの救助の筆頭に立っていた艦長をザリガニたちに食い殺されており、ザリガニに対しては勿論、米軍内(潜水艦の接岸位置は特殊で、これだけは米軍基地側だそうで)(だから治外法権じゃないけれど、米軍管轄地区内なので救出行動もすぐにはとれなかったという設定です)の立ち入り禁止区域に入り込んでいた子供たちにも始めは苛立ちを隠しきれません。(因みに子供たちは年に一度の祭りに遊びに来てた地元の子で、立ち入り禁止区域にいたのは迷い込んでしまったからです)
でもしょうがないよね。
子供たちは安易に「大人だから」「市民を守る立場だから」といっぱしの口を利いて自衛官らに自分たちの保護の正当性を翳しますが、自衛官だって人間。職務上子供たちを助けはしたけれど、親ほども慕っていた上官を失った痛手は深く、「こいつらを助けたばかりに…」「上官が生きていてくれるなら、子供なんて死んでもよかった」と思う気持ちは止められません。
でもまあ、それも初めだけで、子供たちの中には自分たちを助けるために艦長が死んでしまった事実を受け止められる子も出てきて、自衛官らも尊敬する艦長が命を張ってまで職務を全うすべく守った子供たちなのだから、と己を奮い立たせ、両者は和解をみます。
でもさすがに小学生から高校生まで13人もの子がいれば、中には反抗期真っ只中で和解のわの字もないガキ大将もいて、限られた空間である潜水艦居住区内は必ずしも平穏な毎日とはいえません。
町内会の子供たちの親をも含んだ力関係とか人間関係が絡み合っているという状況で、ある意味子供たちの勢力にまったくの無関係である部外者の自衛官二人という石が投石され波紋を広げ、それぞれ子供たちに影響を与えてゆくさまは読んでいて楽しい流れです。
ガキ大将グループが一人ずつ懐柔されてゆくところとかね。
外では機動隊が命を張って巨大ザリガニの進行を食い止めているんだけど、ザリガニに破られない鉄の塊の中では子供たちの心理的な葛藤が色々。このギャップが楽しかったのです。

機動隊側の話は省きますが(いやもうその姿勢には涙涙で…)、VSザリガニ戦も対抗策やら解決の糸口やらがどんどん見つかり、戦いが終盤に向かってゆくにつれ、艦内の子供たちの話も色々進んでゆき、最後は結局一人残ったガキ大将も一歩大人の階段を登ることができたのでした。
自分が愚かだったことを自覚したガキ大将がその後悔の中で何度か同じ言葉を口にするのですが、ワタシにはそれが結構意外でした。意外というか、中学生の子供から、よもやそんな言葉が聞けるとは思わなかった。
確かにガキ大将は成績優秀という設定ではありましたが、自分のことを反省する言葉としてその単語が出てくるとは…。実はちょっと違和感でもあります。中学生が何を考えているのかなんてちょっと遠い話ですが、少なくとも、ワタシが中学生の頃には自分を省みてそんな言葉は嘘でも言えなかったわ…!ガキ大将の成長、すごいな!

あと読みやすかった理由の中に、適度に軽く恋愛模様も入っていたからかもしれません。保護された子供たちの中に弟の付き添いで来た高校生の女の子がいたのですが、この子がかっとなるほうの自衛官に段々と恋してゆく辺りとかが。
読み終わってからしまったー!と思ったのですが、この子が前出の「クジラの彼」で出てきてた自衛官の彼女なんですね~。
そうか、メイン二人の恋愛番外編だったんだ、あの短編集は、と読み終わってから気付いた次第です。(遅いよ)(名前が登場したところで気付こうよ!)
この事件をきっかけに出会った二人が物語の後に恋人同士になってあの番外編に繋がっているとしたら、きっともっとのた打ち回って読んだことでしょう…。あれ超甘々だったもん…。そうか、高校生はあんな感じになって、自衛官もあんなふうにめろめろになってゆくんですねー。可愛い。

巨大生物襲来!となると、ゴジラとかそういった特撮映画が頭を過ぎりますが、この小説の中では「戦争」扱いなので容赦なく人が死にます。でも最大限救うため、機動隊は頑張りました。
けれど、機動隊が死に物狂いで戦った五日間がまるでなかったことのように、自衛隊に現場が移行された途端、ザリガニは殲滅されます。圧倒的武力差によって。
軍隊のすごさを痛感しました。機動隊の方たちも作中で言ってましたが、機動隊はあくまで警視庁の所属で、「人間の犯罪者」を想定した組織なのだから、もう少し早く政府が自衛隊の出動を認可していれば助かった人もたくさんいる。
作中ではそれでも精一杯の迅速な対応として現場を自衛隊にバトンタッチした描写でしたが、実際にもし神奈川の海から人間を食べる巨大ザリガニ(人間より巨大で獰猛)が何万と襲来したら、絶対に民間人の避難は間に合わなかったし、一週間も防衛線を死守できなかったと思う。機動隊の兵力云々じゃなくて、普通にそう思う。むしろ、一週間で日本が滅びてましたよ。
人間は生き延びたことを感謝すべきなのだろうけれど、救助された子供の親の反応を見ているといまいち自分の国の自分の近くで起こった命に関わる事件という感じがしません。
絶対にザリガニ襲来のニュースを見て、国外に高飛びした人がいるはず…!いるはず…!

そんなことはさておき、女王ザリガニ、一目見たかったな~。
ワタシ途中まで絶対に女王ザリガニを探し出して、司令塔を殺す作戦だと思ってました。気持ちよく騙されました(笑)。清々しい裏切りは大好きです。
Comment
≪この記事へのコメント≫
なんか面白そうー。
アタシも今度読んでみようかなぁ。実家帰ったとき借りに行っていい~?
2008/09/04(木) 19:12:15 | URL | T姉 #-[ 編集]
面白いよ♪
でも根底が恋愛小説ぽいので、T姉の望むほどのコアさはないかもです。でもワタシは好きさー♪
2008/09/08(月) 22:29:40 | URL | タカヤマ #-[ 編集]
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